グラフィックデザイナー?Webデザイナー?パッケージデザイナー?
世間一般的にはグラフィックデザイナーと聞くと様々な業界をジャンルレスにゼロからデザインしているイメージが強いかもしれませんが、結構業界は縦割りみたいになっていて、紙のデザインはグラフィックデザイナー、WebサイトはWebデザイナーがやるという方が一般的です。これは一個人だけでなく会社単位でもその傾向は強いため、これだけWeb制作が身近になった今でも従来のグラフィックデザイナーからしたらWeb制作には苦手意識というか、なんだかんだコードがある程度わかっていないとデザインできないので、なかなか一歩を踏み出せない状況になりがちだったりします。それで同じようにパッケージデザインも見た目同じ紙媒体だしIllustrator、Photoshopで作れるし似ているようで実は全然業界が違うのですが、Web制作と異なり、そこまでレッドオーシャン化していない割に需要は結構多い印象があって、紙の仕事が目減りしていくグラフィックデザイナーの人には手を出しやすいんじゃないかな?と感じています。
ワッカデザインも今ではWebサイトからいただく問い合わせでパッケージデザインの依頼というのはだいぶ増えてきましたが、そもそも手掛け始めたのは独立して会社にした頃で(つまり3年目くらい)、最初はちょっと変わった案件をランサーズでやってみようくらいなものでした。当時はパッケージデザインでしかもちょっと複雑な条件だと実質10案程度の競合だったため、きちんと考えれば3回に1回くらい取れており、普段の紙の仕事、Webの仕事とはまた異なった実績が増えて意気揚々とポートフォリオに入れていたものです。不思議なもので一つ一つ実績が出来てくると、それが呼び水になるのか、僕自身は特に営業らしい営業はしていないので本当に不思議なのですが、ランサーズとは別のところでもそういった仕事が少しずつ入ってくるようになる。今でも会社の売上的に主力という立ち位置ではありませんが、デザイナー1人の人件費くらいにはなっていて、フリーランスであれば実はパッケージデザイナーとしての独立もやろうと思えばやれるくらいには育ってきました。パッケージ起点で色々と他の仕事に結びつくこともあり、趣味みたいなものでしたが地道にやってきてよかったな、と思わさせられます。
特色指定、白版は当たり前!?箔押し、蒸着、練り込み、塗装…出くわす様々な仕様
その昔DTPエキスパートという印刷デザインの知識を網羅する資格を取ったこともあり、紙のグラフィックデザイナーとしてはどこの会社に行っても(それこそ印刷会社に行っても)印刷知識においては群を抜いていた僕ですが、こうしてパッケージデザインの仕事に携わるようになると、いかにそれがまだまだだったかを思い知ることとなります。特色指定や白版くらいなら紙の仕事でも出てくることはあるものの数は少なく、これでデータが合っているか毎回ドキドキしたものですが、パッケージデザイン的にはそれは当たり前で、そこに箔押し、蒸着、練り込み、塗装などといったものも加わったり、技術的な改善があって急にこれまでできなかったようなデザインが可能になったり(ドラッグストアとか見てても、今年は微妙なグラデーションのチューブ流行りましたよね。あれはああいう技術ができたからだったりするのです)、もちろん実際にはパッケージ会社と相談しながら進めるのですが、とにかく仕様とそれに対する想像力みたいなものがデザインと同時に必要とされる。しかしながらこれがまた結構おもしろくて、こういう技法があってこう使うとこうなるのか!みたいな発見がいつもあって、それって紙のデザインの様々な印刷に対するワクワク感の延長線上だったりするので、適性によっては下手に需要があるからって興味を持てそうにないWebデザインをやるよりパッケージデザインに踏み出してみたらいいんじゃない?という風に思うわけです。
販促物とは異なる製品そのもののデザイン
しかしながら使うアプリケーションはIllustrator、Photoshopだし、デザイン的にはそこまで紙のグラフィックデザインと違うわけではないというのも参入ハードルの低いところでしょうか。実際にデザインしていて思うのは、販促物や広告と違って商品そのもののデザインなのでロゴや書体など一つ一つのオブジェクトの重要さをシビアに感じるということ。今更のように昔からある書体の良さに気付かされたり、配色のちょっとした違いに敏感になったりと、その辺りはグラフィックデザインと被る部分がありつつも微妙に違うといえば違うのかもしれません。出来上がったものを見た時の感動みたいなものも結構ありますね。基本的に立体なので存在感がすごくあるのと、前述の通り仕様が結構複雑なことが多いので、データやプリントで見ていた時とかなり印象が異なるのもあって、未だにサンプルが送られてくるとその時やっていた仕事そっちのけで見入ってしまったりします。これはパッケージの仕事ならではかもしれません。
そんなこんなで日々勉強。これもキャリア20年近くなってきて紙のグラフィックデザインだけよりパッケージの仕事があるおかげで保てているようにも思います。以前だったら気にも留めなかった韓国デザインのパッケージとかもね、最近はすごく刺激的に感じるし、なかなか自分と関係のない仕事はそうした目線で見れないものなので、その意味でもありがたいな、と。発売が春なので見せれるのはまだ先だけど今年は製品周りのリブランディングとかもやる機会があって振り返ってみるとパッケージデザインはとても充実していたように思います。来年はどんな仕事が待ち受けているんでしょうね、楽しみです!