絶望感いっぱいの経験者採用
いつの頃からか新卒や転職未経験者の採用応募はこのWebサイトから時々来るようになりました。こちらが特に求人募集を掲載していない時でも来たりするので、いかに毎年出てくる美術系・デザイン系の卒業生たちの数に対してこの業界の受け皿が少ないかを感じさせたりするもので、僕自身も医療機器営業を辞めてグラフィックデザイナーに転職する際には「未経験可」と書いてある求人に片っ端から応募、時にはWebサイトから直接応募したりもしていたので、それは昔から変わらないんだなと思います。そんなわけで、新卒・未経験の場合は結構応募があったり、求人掲載もあまり費用をかけなくてもなんとかなったりするものだったりします。
それで昨年の秋頃、案件の量に比して人員の不足からベテランデザイナーやWebデザイナー兼コーダーの募集をかけるべく色々と問い合わせたり調べたりしていました。まず思いつくマイナビやリクナビといった求人媒体は1ヶ月求人掲載するだけで何十万とかかり、その他の媒体も多少の金額の差こそあれ結構な金額がかかることが判明。しかも近年は媒体に載せたけど1人も応募が来なかったなどザラに聞く話なので、どうしても二の足を踏んでしまう。それならビズリーチなどに代表される人材紹介サービスはどうかというと、これがまた問い合わせてみると1人採用するのに200万円以上かかったりすることがわかり(むしろビズリーチは安い方だったのですが)、デザイン関係に限らずこの国における経験者採用がいかにきついかはこれだけでも十分わかります。中小企業と一口に言っても色々ですが、準大手的な中規模企業ならともかく、小規模企業や零細企業にとって、採用コスト1人あたり200万円などそうそう払えるものではないので、その時点で途方に暮れる経営者は多いのではないでしょうか?つまり、ベテランが辞めてしまえば補充が効かないのが現実なのです。
Wantedlyをやってみた!
かなり昔に流行った「ゆるく会う採用SNS」というイメージの強かったWantedlyがITやデザイン系なら案外悪くないよ、という話を聞き、早速問い合わせて話を聞いてみると、確かにスカウト数は限られますが金額はリーズナブルで半年間掲載で60万円ほど。他の媒体なら1ヶ月で終わってしまう金額なので、それが半年も使えるならそれでも安くはないがまぁなんとか、なんとか、というのと、強みがスカウトの際の返信率で20%あるというのも魅力的で、これが他の媒体なら100人に1人=1%あるかないかだから、Wantedlyなら一応払える金額内でこちら側の努力次第で何とか実のある採用活動ができるのかな?と思い、やってみることに。それでその時の募集イメージが「Webデザインが出来てWebコーディングも出来る」として、スカウトメールを送るべく目をサラのようにして求職者たちを見ていくと、1000人くらい見ただろうか、それでスカウトメールを送ろうと思ったのは15人ほど。正直なところ既に大手に勤めているとかだとうちみたいな小規模で色々整っていない会社に来る可能性は無茶苦茶低いと思うので、キャリア的に合致しても省いていたというのはあるけど、それでも月に20人しか送れないという枠だから吟味に吟味を重ねようと臨んだのに、そもそも20人もいなかったというのがリアルだったわけだ。今思うと条件的にコードが書けてデザインやってるよ、なんていう人はそもそもが貴重で、そこまでできれば独立もしてるよね、という話で、ちょっと採用の方向性が悪いよねという感じはするのだけど、ただ、ウリとされているスカウト返信率の高さは本当で、そのうち3人は面接に漕ぎ着けた上、1人は狙い通りのポジションで今も働いてくれて1年経つわけだから、Wantedlyの採用施策自体は奏功したというのが昨年の話だ。
赤裸々な本音吐露の採用ページ+インスタ広告
しかしながら、今年の採用活動、すなわち僕が一人でやっているグラフィックデザイン全般を一緒にやってくれる人の採用を考えた時にはまたWantedlyを使う気にはなれず、かと言って有効な手も思いつかないし、人材会社に200万円も出せない。完全にオーバーワークで辛い日々を送って半年くらい経った今年の10月のある日曜日に、どうせこのままどうにもならないならいっそ本音をぶちまけてそれを見てもらうことに賭けようと、とにかく助けてほしい、仕事の内容も全く盛らずにリアル感満載で、勢いで自社サイトに採用ページを作成、一応翌日におかしな内容がないか確認した上で(それでも誤字を直したくらいだけど)、instagram広告で東京都23区に1週間限定で配信。そしたら、来たんですよ、応募が!6人も!もちろんこちらの狙い通りの人もいれば、ちょっとキャリア的に狙いとズレてるかなという人もいたけど、みんなIllustratorを使ったデザインのキャリアのある人たち。本当に涙が溢れそうで、その中でまずは最もイメージに近い人と面談を実施、その日のうちに内定を出し、1週間以内に返答いただく約束に。気が気でない1週間でしたが、無事に受諾の回答をいただき、11月から働いてくれているわけです。大袈裟ではなく、今、精神が狂うこともなく、会社をどうにかすることもなく、何とか仕事をこなしているのは、間違いなくこの採用のおかげ。感謝してもしきれません。
身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ!
instagramでの求人広告は実は今回が初めてではありません。それなのに今回だけ今までにない応募があったのか、それはもう本当に死にそうになった精神状態での赤裸々な本音が見た人の心に刺さったのではないか?と思うのです。振り返って感じたのがまさにこの言葉「身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ」本当に昔の人は上手いこと言うな、と思いました。今までどっちかと言うとよくあるスマートな感じの採用ページを作っていて、それはビジネスマナーとか会社としての信頼感とかそういう狙いがあったわけですが、それ自体はどこの会社も一緒。それでもワッカデザインのWebサイトは印象に残るとよく言われるので、採用シーン的には他の会社よりはマシだったのかもしれませんが、今回は本当に勉強になりました。本当に必死になるということがどういうことか、そしてそれを見てくれる人は必ずいるということ、人の本音こそ人は共感すると言うこと。本当に難しい局面が訪れた際に乗り切るにはこうした経営者の姿勢が不可欠なのだと。これまで色々と身につけたつもりではありますが、今後も現状に甘んじることなく一生懸命立ち向かっていく、そうした姿勢を旨としたいものです。