DESIGN STORY #08

身に付けたデザイン力を発揮するという形での社会貢献のあり方

「仕事でやらないこと」の面白さ

長くグラフィックデザイナーをやっていると、時に採算に合わないけれどやってみたいと思えるような案件(「案件」と言っていいのかも怪しいくらいの)に出くわします。知り合いが何か活動するからロゴやチラシ、Webサイトが欲しいとか、最近だとSNSで使えるような何かが欲しいとか。大抵そういう時は予算がないどころの話ではなく、「飯おごるからさ」とか言われたり、会社であればその会社の製品と物々交換になったりなど、とにかくお金には変換されないことが多いのですが、純粋にクリエイティブな意味で面白そうと思えることもまた多く、採算度外視で引き受けたりすることはあります。今回はそんな中から特に印象に残った実例2点をご紹介します。

地域アイドルのキャラクターデザイン化

ある案件を通じて地元豊島区という地域で活動するアイドルと知り合うことがありました。聞けば地域のゴミ拾いなどかなり地道なところから始めてもう何年も活動しているとのことで、その昔音楽団体を作って活動していたことのある自分からすると実にアッサリと感じ入ってしまい、勢いでその話を聞いた週末に3等身キャラクターを作ってしまったのでした。僕が活動していた頃と違い、今はtwitterやYoutubeなどでいかに印象を残せるかが非常に大きいため、オリジナリティの高いキャラクターがいるというのはそれだけで強力に活動支援になるはず、と思っています。おそらくこれはアイドルに限らず、町おこし的なプロジェクト、BtoCのスタートアップ企業、個人の音楽教室などでも共通の課題。だからと言って頼み込めばいつも無料で作るよ、というわけでもないのですが(笑)

ロックバンドのWebサイト制作

2つ目の実例はロックバンドのWebサイト制作になります。思えば大学生の頃、それはデザイナーになるなんて夢にも思っていなかった頃ですが、一眼レフで知り合いのバンドの撮影をしたりしていたものなので、曲作りを超えてバンドマンがやっぱりデザインにも自分たちの表現を投影したいという気持ちが強くあることは自然と理解しているのかもしれません。それで今回のWebサイト制作は知り合いからの紹介なのですが、zoomで一度話を聞いてみたら、よくもまぁ思いの丈がこんなに出て来るなぁと感心するくらいに話を聞くことができたので、その想いに準じるつもりで、まずは複数案によるキービジュアルの提案と、それが決まってからはWebサイトの制作を行いました。進め方としては予算が少ないお客さんの時と同じように、コーディング不要でクオリティの高いWordPressテンプレートを使うことで費用を浮かし、デザイン料をいただかないというだけでクオリティ的には仕事で請けているものと遜色ないかな、と思います。社内で開発したこの猫ちゃんのイラスト、いい感じでしょう?こういう仕事ベースだと難しいことが出来るというのは、クリエイター的には嬉しく思うものです。

身につけたデザイン力を使って何かをしたいという気持ち

個人的な話ですが、僕が新卒で入社した医療機器営業の会社を辞め、経歴も経験もないグラフィックデザインの世界に飛び込んだ時は、今思えば何でもないような案件でも常にワクワクして制作していたものでした。会社を渡り歩く中でいつしか実力がついてきて独立しても食べていけるようになり、さらには会社を興し、そこからもう5年。案件によって求められるものもかなり正確に理解できるようになりましたし、それにデザインという形できちんと応えることで仕事としての対価をもらうというのがプロのデザイン業としてのビジネスなので、そこに不満は全くありませんが、時に純粋にクリエイティブな力を発揮したいという欲求はクリエイターなら誰しも持っているものです。

いつの頃からか仕事に「社会性」を求められるような空気が広がってきています。ビジネスを行う上で利益を出すという行為は何かと批判されがちですが、利益が出せないとビジネスは成立しないし雇用も生み出せないので、社会性ばかりを追い求められるのは実際はなかなか難しいと思いますが、自分たちの会社という目線だけで見れば、やりたいクリエイティブをやれるということがひょっとしたらクリエイター本人にとっても社会にとっても役に立つということもあるのかもしれません。それはつまりクリエイティブな会社が行えるCSR的なものの一つの形であり、一年のうち全部ではなくとも時にはそういうことがあっても良いのかな、という風に思うのです。

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