融資=借金って悪いもの?
そもそも借金というこの漢字2文字の熟語がまずイメージ良くないような気がしていて、逆に無借金経営とか聞くとすごく良さそうなイメージを抱く人は多いような気がします。確かに個人レベル、一人の人間の人生で言えばそうなのかもしれません。なんとなく借金してる人=ギャンブルする人とか、お金にだらしのない人、浪費癖のある人みたいに思いがちですが、多くの人が家を買う時に組むローンも借金は借金だし、35年なんていうとんでもなく長い期間組んでるというリスクはどうなの?そう言われるとちゃんと払えるようにしてるんだし、別に悪いことじゃないじゃん、そういう風な枠組みだよって言い返したくなるのではないでしょうか?小さな会社をとりまく借金の事情もそういう風に捉えられると少し見方が変わってくるように思います。
世代によっては金融機関からお金を借りること自体に対する悪いイメージがある人たちもいます。僕よりももうちょっと上、バブル崩壊後の金融機関の経営破綻や貸し剥がしを目の当たりにしてきた人たちのことですね。それ自体は過去に本当にあった事実ですし、それで悪い印象があるのも致し方ない気もしますが、それこそ事業を続けていくために無理なスキームでなければ融資を受けるということそのものは僕は悪いことではないと思います。事業、特に商談や売上が自分で100%コントロールできるものでない以上、時期によってキャッシュに余裕がある時期もあれば苦しい時期もあるのは当たり前で、それを防ぐことそのものはできないからです。また、極論を言えば、会社って赤字になったら、あるいは赤字が続いたら倒産するわけではないですよね?ではいつ立ち行かなくなるのか?それは資金が尽きた時=諸々の支払いができなくなった時。自己資金だろうと借金だろうと資金があるうちは事業は継続できるので、言い換えると自分達の信用(この事業はちゃんと儲かって続けることができるんだよという信頼感)を武器にお金を借りて時間的猶予を確保しているとも言えると思うのです。
「信用」があるから借りられる、その信用とは?
よく言いますよね、「信用」。経済や金融では「信用経済」とか「信用創造」などと言うこともありますが、とにかく信用があるからお金を借りる=融資を受けることができて、信用がなければ借りられないというのもまた事実です。それでここで言う信用とは何なのか?もちろん社長の人となりもその中には含まれますが、それよりも事業がちゃんとしているか?起業時であれば過去の実績はないので事業計画がちゃんとしているか?とかのことで、ぶっちゃけて言うと黒字化して貸したお金が滞りなくちゃんと返してもらえるか?そしてそれはこの会社ならいくらまでならそれができるのか?そういうニュアンスで捉えると銀行の人、信用金庫の人とも話しやすいように思います。逆に言うと結構貸してくれないというのがデフォルトだと思います(実際脱サラ飲食店などではなかなか融資を引き出すことは困難のようです)。借り過ぎという事態は今の世の中ではなかなか起きないんじゃないですかね。
そうなるとその「事業がちゃんとしている」というのはどういうことなのか?これが意外なことに自分から銀行や信用金庫の窓口に行ってお金貸してください!って言ってもダメだったりするんですよね(日本政策金融公庫だけは別です。創業時には活用したいですね)。彼らは基本的に自分から窓口に来る人をあまり信用していないようで(何かワケがあって来てると判断する)、誰か他の経営者の人に紹介してもらうか、向こうから営業してくるのを待たなければならない。じゃあ彼らのその営業活動における最初のとっかかりは何なのか?というと帝国データバンクに企業情報が載ったとか、色々調べていてWebサイトがしっかりしていて事業の調子も良さそうに見えた、事務所があって固定電話も引いているみたいなところで、それなら事業に対する覚悟があるよね、という風に考えるようです。なのでその意味では昨今のシェアオフィスだと不利だったり、携帯電話だけだと微妙だったり、というのは実はここに大きな理由があったりします。もちろん事業的にそれで困らないのであれば、全然それで良いのですが。
金融機関と付き合い融資を引き出していくことをミッションにする
ワッカデザインのようにあまり仕入れや設備などの費用がかからない事業の場合、融資がなくてもやっていける算段はつきやすいものですが、その一方で融資を引き出していくということを一つのミッションにすると色々とハリが出るようにも思います。手元に資金があれば事務所環境を良くしたり、優秀な従業員を雇ったり、経費のかかる大きな仕事が受注できたりみたいな選択肢が広がり、それは要はお金を借りることで時間を前倒ししているようなものなので、僕も最初は懐疑的だった借金も始めてみればその借入残高を増やしていくことが常に頭のどこかに入っています。彼らは彼らで色々と要求して来ます。毎月の積み立てをやってほしいとか、クレジットカードを作って欲しいとか、投信がどうとか、他にもなんだかんだと色々あって、そのやり取りの中でこの経営者は彼らにとって「話せる」経営者かどうかを見られているように感じます。そうした中で常に事業規模に対して最大額借りれてる状況を作れているといいのかな、と思うわけです。
ここで一つ落とし穴というか、これもやってみて気づいたことがあって、ワッカデザインでは公庫と決済口座のメガバンクを除くと、信用金庫は2ヶ所、地方銀行1ヶ所に口座を持っていていずれも融資を受けたことがありますが、その融資残高を伸ばしていくことに熱意があるかどうかは金融機関やその支店で結構体質が異なっていたりするのです。今ワッカデザインがメインバンクとしているのは朝日信用金庫ですが、彼らは借り換えの提案、今やっているのとは別の融資の提案などにとても積極的で、他の融資を受けている2つの金融機関を圧倒。取引先の社長など色々な人とこういった金融機関の話をしますが、こうしたちゃんと経営者を見てくれる、事業を見てくれる、その信用を融資という形にしてくれるという体質の金融機関はむしろ少数派な気がします。なので、独立・起業して、融資を視野に入れるなら、実はそうした金融機関の営業範囲に事務所を構えた方が良いかもしれません(多くの中小企業は銀行ではなく信用金庫との取引になると思いますが、信用金庫は銀行と違って明確に営業範囲が定められているので、営業範囲外の会社とは取引しないのです)。
つまり、キャッシュフローの中でバランスを取るということ
このような中で融資を増やしていくと、ある時こう気づくと思います。あれ、これって結局毎月返済しつつも結局また融資残高が増えるんだから、返していないのと一緒じゃない?つまり、これってとめどなく続いていくお金の流れの中で今自分が安定するにはどうする?という話なんだ、と。もちろん実際には多少の利子が含まれているので、実際にはそれが費用みたいに出ていくお金にはなっているのですが、中小企業、特に小規模企業にとって1.5%や2%とかって金利は金額にしたらそこまで苦しめられるというものでもなかったりします。なので結局売上入金があって、固定費・変動費といった支払があって、返済金額があって、という毎月のお金の流れの中で黒字なら融資を受けていて問題ないということがわかってくるのではいでしょうか?
そうなってくるといわゆる節税もまた違った見え方をしてきます。個人事業主や小規模な企業でも意外と節税に熱心な経営者を結構見かけますが、これも本当に利益が上がっている、つまり年間数千万円とか当期純利益が上がっているならともかく、それが数百万円レベルでは税率も低いですし、節税と言ってキャッシュが出ていってしまうなら、利益にして納税しても自己資本を増やしていくことのほうがこうした融資も含めたキャッシュフローの中でのバランスという意味ではよほど良いような気がします。多くの小規模事業者は融資を受ける際に社長の連帯保証が付いていると思いますが、利益を貯めていって自己資本が本当に大きくなってくれば、実はこの連帯保証も外せる日がやってくるという話です(僕はまだそこまで行っていないので)。この融資にまつわる話も自分が独立・起業するまではまったく聞いたこともないような話でしたが、それに一歩を踏み出した結果わかったことがいっぱいあって、それのコアな部分を今日のblogとしてアップしました。これだけインターネットが発達して情報が誰でも取れる時代にあって、企業経営に関する結構大事なことはどこにも出ていなかったりします。本当に小さなデザイン会社ですが、それをやっていたからわかったことをこれからも少しずつ発信できればと思いますので、ぜひぜひ今後とも楽しみにしていてくださいね。どうぞよろしくお願いします。