グラフィックデザイナーがWebデザインをするには

Webデザインもグラフィックデザインの一部だ

グラフィックデザイナーがWebデザインをするなんていうタイトルを自分で付けておきながら、僕にはちょっとおかしなことに思えます。それはグラフィックデザインとWebデザインは対等の関係ではないからです。業界的にグラフィックデザイン=紙のデザイン、WebデザインはWebサイトのデザインとしてきたような風習がありますが、本来Webサイトのデザインというのは、数多あるグラフィックデザインの一ジャンルに過ぎません。だからグラフィックデザイン的なものの考え方、制作の仕方が身に付いている人からしたら、制作時に多少の作法の違いはあれど、チラシやパンフレット、ポスター、あるいはノベルティなどと同じようにデザインに当たることができるはずなのです。チラシとパンフレットは同じように作りますか?きっと違いますよね、ページの概念、フォーマットの概念などチラシとは色々構成の仕方が変わってきますが、Webデザインもそれと同じようなものです。それが仕様としてCMYKではなくRGBで作るし、mm単位ではなくピクセル単位で作るだけのことです。

とはいえ一口にWebデザインと言っても、やっぱりいくつかジャンルに分かれます。紙に例えるなら、コーポレートサイトは会社案内(パンフレット)、ランディングページはチラシ(特に折り込みチラシ)、メディアサイトは雑誌と言った具合でしょうか。紙のデザインでも実際に作業する際にその辺りはだいぶ勝手が違うので、もしあまりやったことのないジャンルならかなり調べると思うんですね。その上で今やらなければならない案件やクライアントにとって何が最適かを考える。パンフレットやリーフレットで言えば、表紙ならビジュアル表現を考えるし、ページネーションなら中身の伝え方や順番を考える。チラシなら手に取ってもらった瞬間、目に映ったその瞬間のデザイン的な訴求力を考える。そういったグラフィックデザインのごく当たり前のことをWebサイトの上で行うだけなのです。

レイアウトという基礎を紙とWebと共通のものにする

レイアウトは勘ではありません。センスでもありません。あくまでそれはデザイン表現と情報を整理する技術です。間を空けるのもセンスではなく、こういう印象で見えてほしいという技術です。だから例えば「揃える」ということで言えば、マージン(隙き間)で揃えるのと間(アキの空間)で揃えるのを技術として組み合わせます。未熟なうちはマージンのみで揃えがちなため、マージン枠にオブジェクト(文字や写真など)が引っ張られがちです。コンテンツがぎっしりある場合はそれでも比較的美しく整いますが、コンテンツ量がそうでもない時は妙に外側に引っ張られたレイアウトになってしまいます。その時に間で揃えることができれば空いている空間量が整うので、細かなパーツはマージンできちんと揃い、全体としては空間で揃っているので見た目に自然に調和させることができます。そのための細かな技術はそれこそ山のようにあるため、あらゆる場合で確実にレイアウトを行うだけの技術を身につけるのはかなりの年数・経験を必要とするけれど、考え方だけでいえば僕はここまで出来てレイアウトの基礎は達成かな、という風に思っています。

これは身に付いている人からしたらそのままWebデザインにも当てはまります。たまたま単位がピクセルになるだけで、紙の上で0.1mm単位で行っていたことを1ピクセル単位で行うだけのことです。それよりデザイン的にもう少し上のレイヤー、例えば情報の強弱の付け方やデザイン表現との兼ね合いというレベルになってしまえば、紙もWebも何も変わりません(マージンと間の関係も同じです。だからこそ紙の上でもあらゆるパーツをきちんと0.1mm単位で制御することが大切です)。そして、「ここはもう少し目立たせたい」とお客さんに言われたら、その「もう少し」とはレイアウト的にどの辺のことなのか、全体のレイアウトの中での調和の取り方はどうなるか、こういったところに紙もWebもないわけです。あるのはレイアウトの技術、ただそれだけです。まぁでも実際にはWebにはコーディングとの兼ね合いがあるので、ある程度その知識は身につけなくてはなりませんが、デザインするだけなら極めて基礎的なこと(htmlとcssの仕組み+αくらい)で何とかなります。実装できるか怪しければそれこそググればいいわけで、「調べる」という行為がデザイナーの仕事のうちなのも前述の通りです。

そして、「この案件にどういったデザイン表現がふさわしいのか」「全体のトーン&マナーはどうすべきか」といったようなさらに上のレイヤーではますます紙とWebは関係なくなります。本来ここが「グラフィックデザイン」の最もプロフェッショナルたるところ。だからなのか、どうもレイアウトの技術は軽視されがちなのですが、レイアウトという基礎はその「グラフィックデザイン」という見地での視野を広く深くするためには絶対的に必要です。そしてそれは威張れるようなことでも何でもなくただの基礎なのですが、それがあやふやなデザイナーが多い。自分の会社を見ても競合の会社を見ても、特にそう思うのです。

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