デザインの人を動かす力こそブランディング

デザインは見た目のことではあるけれど

 
デザインの仕事をしていると、世間一般の抱くデザインに対するイメージとその本質に結構開きがあるように感じることがあります。カッコイイものを追求するだとか、美しいものを追求するだとか、他にもそういうのは色々あると思いますが、極端な話クリエイターの自己満足を追求する、そういうイメージを抱いてはいないでしょうか?他の業界で働いている人からすればデザイン界の雰囲気や見た目からしてどうしてもそう思われがちではあるのだけど、正直なところそれは表面上のことに過ぎなくて、もっと大切なことはデザインされたものを誰かが見て何かを感じ、行動するというところにその本質があったりするので、きちんとしたクリエイター、グラフィックデザイナー、アートディレクターほど、デザインしなければならないクライアントのことや製品・サービスのこと、そのユーザーのこと、取り巻く環境のことなどにとても深い理解を必要とするものだったりします。その上で必要とされる表現を考え出し、デザインという形に置き換えていく。そう、カッコイイだとか美しいだとかはもちろん追求すべきものではあるけれど、基本的には手段であり、それ自体がデザインの神髄ではないというわけです。

 
僕が子どもの頃は「見た目ばかり気にして」というセリフをよく聞いた気がしますが、昨今は「見た目って案外大事なんじゃないか?みんな見た目で物事をかなりの部分判断しているんじゃないか?」という風潮になってきているのは誰しも感じているように思います。日頃グラフィックデザインという仕事をしていて、クライアントやその製品・サービスをどう見てもらえばより世の中に伝わるかということばかりを考えている自分としては、この風潮はとても共感出来ることだったりします。もっと言えば、その製品・サービスの本質を伝えるためにデザインが必要で、その時にどんな表現がしっくりくるのか、カッコイイのか可愛いのか美しいのか、カッコイイならどんなカッコよさなのか、可愛いのはどういう可愛さなのか、もちろん美しいにも美しいと言える表現は無限に存在するので、じゃぁこの製品ならこんなカッコよさをこういう風に感じてもらえればこの製品をわかってもらえて手に取ってみたくなるし、使ってみたくなるよね、というのをパッケージデザインで、リーフレットデザインで、ポスターデザインで、webデザインで、バナー広告で、雑誌広告で、駅張りポスター等々で瞬時に理解してもらわなくてはならない。つまり、デザインの見た目と本質は合致していなければならず、その共通言語として打ち合わせなどでは「コンセプト、コンセプト」と言っているわけです(ただデザインの見た目上、奇をてらった方が表現として訴求するということも往々にしてあるから、デザインというのは本当に難しい)。

 

それが企業全体のこととなればブランディング

 
昨今よく言われている「ブランディング」も基本的には同じことで、それが製品・サービスなどという次元ではなく企業そのものというレベルになってくるため、守備範囲も広がれば難易度も高くなるのですが、だからと言ってそういったものは資本力のある大企業だけのものか、というと実はそうでもなかったりします。大きな会社だろうが小さな会社だろうが、はたまた個人事業主だろうが、自分たちのこだわりや魅力、強みをデザインによって目に見える形にし、社内外にきちんと伝えていくということがビジネスを行っていく上でいかに大切なことか。ただもちろんそれを具現化していく上で大きな企業ほど様々な手段をバリエーション豊かにやっていくことが多いから当然お金はかかるのだが、「ブランディング」ということが必ずたくさんの資金を必要とするわけではありません。その企業その企業ができることを着実にやっていけば、業界での優位性を高めたり、社員の士気が上がったり、世の中への認知が広がったりするものだから、同じ会社案内を作るならどういう会社案内を作るのが良いのか、それが出来たらwebサイトはどうあるべきか、営業マンが日頃使うプレゼン資料やチラシ、名刺、封筒などはどういったものがふさわしいか。つまりはそういうことだったりするのではないでしょうか?

 
これから世の中が向かっていくとされる「カスタマイゼーション」という言葉に依らずとも、これからの世の中、デザインの力、デザインによる問題解決はもっともっと必要とされてくるのは間違いないとひしひしと感じます。そうなった時にクリエイターとしての自分が最大限力を発揮出来るように、今、日々の仕事を精一杯取り組んでいくこと。それはつまり黄色い名刺を配り、黄色いDMを出すこと以上の、自分自身の「ブランディング」かもしれません。

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